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鼻涙管閉塞症

手 術

鼻涙管閉塞症とは

目から鼻にかけての涙の通り道である鼻涙管(びるいかん)が閉塞した状態です。正常であれば、鼻涙管は開通して、涙は鼻の方に流れていきます。ところが、鼻涙管が閉塞すると涙が鼻に流れていかなくなるため、目に涙がたまります。このため、目やにが増えたり、感染を起こしたりすることもあります。

 

鼻涙管閉塞症は先天性と後天性がありますが、特に後天性では点眼薬や涙道ブジー(針金のようなもので鼻涙管を通す処置)などをしても改善しないことが多いです。難治性の場合は、涙の通り道の涙嚢(るいのう)と鼻を交通させる手術(涙嚢鼻腔吻合術)が必要となります。

 

当クリニックでは、鼻内内視鏡下に涙嚢鼻腔吻合術を日帰り(状況により1泊入院)で行っています。

手術は片側15~20分程度です。
また、副鼻腔癌に対する放射線治療や手術後の鼻涙管閉塞症に対しても涙嚢鼻腔吻合術を行っています。

鼻涙管と鼻涙管閉塞症の原因

涙腺から分泌される涙(なみだ)は、10%は蒸発して、残りの90% が涙道(目から鼻にかけての涙の通り道)に入っていきます。涙液は涙嚢(なみだ袋)に入った後、鼻との交通路である鼻涙管(びるいかん)を通って鼻の中に排出されます。涙道に入った涙の10%程度が鼻の中に排出されると考えられています。涙道の中で鼻涙管が閉塞した状態が鼻涙管閉塞症状です。

鼻涙管が閉塞すると涙液が鼻に流れていかなくなるため、目に涙がたまります。このため、目やにが増えたり、感染を起こしたりすることもあります。

鼻涙管閉塞症が発症する原因は、先天性と後天性(外傷、腫瘍、医原性など)がありますが、多くは原因不明です。

治療法

鼻涙管閉塞症となった原因がはっきりしている場合はその治療を行います。

原因不明の場合、眼科で点眼薬や涙道ブジー(針金のようなもので鼻涙管を通す処置)などをしてもらい、それでも改善しない場合に涙の通り道である涙嚢と鼻を交通させる手術(涙嚢鼻腔吻合術)が必要となります。

涙嚢鼻腔吻合術には鼻内法と鼻外法がありますが、当院では顔に傷をつけることのない鼻内法で行っています。

手術の目的

涙道が閉塞している鼻涙管よりも上流の涙嚢と鼻の中を交通させ、涙の流れ道を新たに作成します。

涙の流れ道を作成することで目に逆流する涙を、正常な流れである鼻の中に流します。

手術法

全身麻酔下に鼻内内視鏡下手術を行います。モニターを見ながら鼻内より内視鏡下に手術を行います。従来の手術のように顔面の切開は不要で、身体への負担や合併症が少なく、回復も早くなります。

 

具体的には、涙嚢を覆っている骨(上顎骨前頭突起・涙骨)を削り、涙嚢を露出させた上で涙嚢に切開を入れて涙嚢を開放します。開放した部分に加工した涙管チューブを留置します。

手術は片側15~20分程度で終了します。鼻内法による涙嚢鼻腔吻合術の成功率は90%以上とされています。

 

●術式

涙嚢鼻腔吻合術

 

※病状により、以下の手術内容を追加する場合があります。

鼻中隔矯正術

内視鏡下鼻腔手術Ⅰ型(下鼻甲介手術)

入院期間

日帰り手術

合併症

当院の執刀医(南)はこれまで約200例の涙嚢鼻腔吻合術を執刀しています。多くが癌などに対する放射線治療に伴う鼻涙管閉塞症で通常の鼻涙管閉塞症よりも極めて重篤な症例ですが、重篤な合併症の発生例はありません。

1.痛み

術後に多少は痛みがあります。鼻内に止血剤(吸収性の綿)を留置していることによる鼻閉のために頭痛を伴うこともあります。鎮痛剤が必要となる程の痛みが出ることは少ないですが、鎮痛剤で痛みのコントロールできることがほとんどです。

2.鼻出血,術後出血

術後には吸収性の綿を挿入し止血します。手術翌日までは少量の出血があることがありますが、徐々に改善します。術翌日または3日目に吸収性の綿を取り除きますが、出血が続く場合は再度処置を行います。

術後に涙に血液が混じることがありますが、これは鼻の中と涙嚢を交通させたことで鼻の中の血液が目に回っているためです。目に回った血液はふき取るようにして下さい。

3.眼症状

涙嚢が存在している部分は眼球が存在している場所(眼窩)と連続しており、涙嚢以外の部位に損傷が加わると眼球を動かす筋肉や眼球そのものに影響が及ぶ重症合併症の可能性があります。

具体的には視力障害、視野障害、複視(物が二重にみえる)、眼球運動障害、眼球偏位が起こる事があります。損傷がなくても操作部からの出血が眼窩内にまわり、術後に内出血(パンダ目)になる事があります。涙嚢の操作であるため、同部に少量の出血は必ず起こりますが、通常は眼窩の内側の下(クマができる部分)の極わずかな皮下出血程度で、1週間程で消失します。

4.鼻の違和感・鼻閉感

鼻の違和感がありますが、徐々に改善します。創部が落ち着くまでの数週間はカサブタがつくために鼻閉感を伴うこともあります。

5.術後の一時的な嗅覚障害

嗅覚を感じる部位(嗅裂部)への手術操作は行いませんが、術後に止血のためのガーゼを留置すること等により一時的に嗅覚障害を生じることがまれにあります。通常は数週間で元の状態に戻ります。

6.Toxic shock Syndrome(10万人に16人程度)

手術をしたことでしばらくの間、鼻腔内の感染部位を手術するため、主に黄色ブドウ球菌の産生する毒素の1つ(Toxic Shock Syndrome Toxin-1: TSST-1)によって急激な発熱や多臓器の障害を引き起こす疾患です。適切な抗菌剤の投与、不要な術後鼻内ガーゼ留置を控えることでTSSの発症を大幅に予防することができます。

7.鼻涙管再閉塞

涙嚢鼻腔吻合術を行った後に、再度鼻涙管が閉塞または狭窄してしまうことがあります。できるだけ再閉塞・狭窄を予防するために涙管チューブを長期間留置している施設もありますが、感染の原因となることもあるため、当院では3ヶ月を目処に除去しています。また、再閉塞予防のために1ヶ月程度は点眼をして頂きます。鼻涙管が再狭窄した場合、症状により再手術を検討することがあります。

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