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副鼻腔真菌症

手 術

副鼻腔と副鼻腔炎の原因

副鼻腔は頬部、前額部(おでこ)、両目の間にある骨で囲まれた空洞を指します。副鼻腔は、いくつかの大きな空間(上顎洞、篩骨洞、前頭洞、蝶形骨洞)に分類されます。それぞれの空間は換気排泄路と呼ばれる狭い通路があり、鼻の中(鼻腔)と交通しています。正常な状態では、この換気排泄路を介して副鼻腔内は適度な湿度をもって換気されています。ところが、炎症などが起こると換気排泄路の周囲の粘膜が腫れてしまい、正常な換気ができなくなります。換気ができなくなると副鼻腔内の粘膜も炎症を起こし、保存的治療でも改善しないと慢性化して慢性副鼻腔炎の状態になります。

副鼻腔真菌症の場合は換気できない状態で真菌(カビ)が繁殖している状態です。

朝霞台駅前みなみ耳鼻咽喉科 副鼻腔真菌症

手術をしない場合の経過

保存的治療で改善しなかった場合、症状は良くても現状維持、また悪化する可能性があります。

特に真菌症では病状悪化により視器(眼)合併症や頭蓋内合併症などの可能性があります。

また、真菌症の場合は手術以外での治療は困難と考えられます。

副鼻腔真菌症の手術

●鼻内内視鏡手術

以前の副鼻腔真菌症の手術は歯茎の上を切開して頬の骨を削るというもので、術後の痛みや顔面の腫れ、しびれなどが起こっていました。

現在では、鼻の中から内視鏡を用いて真菌の塊を除去するという、負担の少ない手法(鼻内内視鏡手術)に変わっています。

朝霞台駅前みなみ耳鼻咽喉科 手術

●日帰りまたは1泊入院

鼻内内視鏡手術は多くの施設で1週間程度の入院を必要としていますが、当クリニックでは日帰りまたは1泊入院での治療が可能です。短期滞在手術であっても全身麻酔を用い、従来の入院期間での手術と同様の手術内容です。当クリニックでは、最新の手術支援器具の採用や術式の改良により、負担の少ない手法を取ることで短期滞在での手術が可能になっています。

鼻内内視鏡手術

手術の目的

鼻内内視鏡手術は鼻内内視鏡下に鼻内を形態的に改善して換気排泄路を作り直し、生理的な状態に戻すことで慢性炎症の治癒を図ることを最大に目的としています。具体的には、鼻内に存在(時には充満)している副鼻腔ポリープ(鼻茸)を除去した上で、慢性炎症を認めている副鼻腔の空間を開放(骨を除去)し、正常組織をできるだけ温存しながら真菌の塊を丁寧に除去します。解放した副鼻腔と鼻腔を大きく交通させることで換気排泄路を作ります。換気排泄路がしっかりと作られれば、副鼻腔の換気が十分にできるようになり、自然に副鼻腔の粘膜が正常な状態に改善してきますし、慢性副鼻腔炎が再発しにくいように予防することができます。

副鼻腔と鼻腔を大きく交通させることで、これまで骨の中にあったために操作ができなかった副鼻腔内も操作が可能となるため、将来的に副鼻腔炎がたとえ再燃した際にも基本的には外来処置で対応することが可能になります。

手術法

全身麻酔下に鼻内内視鏡下手術を行います。モニターを見ながら鼻内より内視鏡下に手術を行います。従来の手術のように歯茎(歯齦部)の切開は不要で、身体への負担や合併症が少なく、回復も早くなります。

副鼻腔手術は片側15~20分程度で終了します。

※病状により、以下の手術内容を追加する場合があります。

入院期間

日帰りまたは1泊入院(手術内容により決定します)

鼻内内視鏡手術の合併症

当院の執刀医(南)はこれまで約2000例の鼻内内視鏡手術で重篤な眼症状、頭蓋内合併症、鼻涙管閉塞の発生例はありません。

過去の報告では、鼻内内視鏡手術における高度副損傷は0~2.1%、軽度副損傷は5.0~15.1%と報告されています。

1.痛み

術後に多少は痛みがあります。鼻内に止血剤  (吸収性の綿)を留置していることによる鼻閉のために頭痛を伴うこともあります。痛みは鎮痛剤でコントロールできることがほとんどで、術後1週間程度は鎮痛剤を内服して頂きます。

 

2.鼻出血,術後出血

術後には吸収性の綿を挿入し止血します。手術翌日までは少量の出血があることがほとんどですが、徐々に改善します。のどに垂れ込んだ血液は飲み込まずに吐き出してください。出血が多い場合はガーゼを鼻の中に入れて止血します。術後2~4日目にガーゼを取りますが、出血が続く場合は再度処置を行います。極めてまれではありますが、再手術による止血が必要となる場合もあります。

 

3.眼症状(0.2%)

鼻内内視鏡手術で最も頻繁かつ重大になりうる合併症が眼症状です。眼球が存在している部分(眼窩)の内側は紙様板と呼ばれる非常に薄い骨であり、軽微な外傷でも骨折してしまいます。過去の怪我で骨折していたり、生まれつき一部が欠損している方もいます。元々非常に薄い骨であるため、骨折程度であれば特に問題になることはありませんが、さらに眼窩内に損傷が加わると眼球を動かす筋肉や眼球そのものに影響が及ぶ重症合併症の可能性があります。具体的には視力障害、視野障害、複視(物が二重にみえる)、眼球運動障害、眼球偏位が起こる事があります。

紙様板にわずかな損傷が加わったり、損傷がなくても止血剤の圧迫などにより眼窩内に血液がたまり、術後に内出血(パンダ目)になる事があります。眼窩の内側の下(クマができる部分)の極わずかな血種まで含めると2%程度の発症率ですが、通常は1週間程度で消失します。

眼窩内損傷の危険性があるために眼窩付近は操作をしない、という術式もありますが、確実に病変を除去し、理想的な換気排泄路を作成するために当院では基本的に採用していません。

 

4.頭蓋内合併症(0.1%)

副鼻腔の上は頭蓋骨の底の部分に当たるため、病変が上の方に及んでいる場合などには、極めてまれですが手術操作によって髄液漏(脳が浸っている液)が鼻の中に漏れ出てしまうことがあります。基本的に鼻内の操作で閉鎖可能です。また、副鼻腔炎が重症で脳硬膜の近くまで及んでいる場合、術後に炎症が波及して髄膜炎、膿瘍などを生じ、激しい頭痛、発熱を起こすことがあります。もし、そのような感染を生じたら、神経内科、脳外科と連携を取りながら治療を進めていきます。

 

5.鼻の違和感・鼻閉感

手術をしたことでしばらくの間、鼻の違和感がありますが、徐々に改善します。創部が落ち着くまでの数週間はカサブタがつくために鼻閉感を伴うこともあります。創部が落ち着いた後も物理的には鼻の通りが良くても、ご自身では鼻閉感を感じられることがまれにあります。

 

6.術後の一時的な嗅覚障害

嗅覚を感じる部位(嗅裂部)への手術操作は基本的に行いませんが、術後に止血のためのガーゼを留置すること等により一時的に嗅覚障害を生じることがあります。通常は数週間で元の状態に戻ります。

 

7.Toxic shock Syndrome(10万人に16人程度)

鼻腔内の感染部位を手術するため、主に黄色ブドウ球菌の産生する毒素の1つ(Toxic Shock Syndrome Toxin-1: TSST-1)によって急激な発熱や多臓器の障害を引き起こす疾患です。適切な抗菌剤の投与、不要な術後鼻内ガーゼ留置を控えることでTSSの発症を大幅に予防することができます。

 

8.鼻涙管閉塞

涙袋と鼻腔を交通している通路を鼻涙管と呼びます。手術操作や術後変化によりまれに鼻涙管が閉塞することがあり、そのために涙の流れが停滞して眼脂(めやに)や流涙が継続します。改善のため手術的治療を考慮する場合もあります。

術後に涙に血液が混じることがありますが、これは鼻内に止血ガーゼを留置することで血液が鼻涙管を逆流して眼の方に流れているためです。涙に血液が混じっている状態は鼻涙管損傷とは関係なく、鼻涙管が鼻腔と交通して血液が逆流しているだけです。

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