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アレルギー性鼻炎

手 術

アレルギー性鼻炎とは

症状は、たてつづけに起こるくしゃみ発作、引き続いて起こる多量の鼻水、鼻づまりです。

他に目の痒み、流涙、頭痛、嗅覚障害などを伴うことがあります。

 

決まった季節のみに発作が起こる季節性アレルギー性鼻炎(春の花粉症など)と、季節には関係なく1年中起こる通年性アレルギー性鼻炎(1年中飛散しているハウスダストやダニなどが原因)があります。いずれの場合も発作中の症状は同じです。 

アレルギー性鼻炎の原因

アレルギー性鼻炎の原因(アレルゲン)としては一般的には、ハウスダストやダニが60%、花粉類が30%、カビ類とそのほかが10%の割合となっています。ハウスダストをアレルゲンとしている場合、1年中症状を認めていることが多いです。ハウスダストは寝具、敷物、衣類などから出てきた塵やほこりで、綿、絹、羊毛、化学繊維のほか、人やペットのふけや垢、羽毛、ダニ、カビ、細菌などきわめて雑多なものが含まれています。

 

花粉をアレルゲンとしている場合は花粉症と呼ばれる状態で、春に飛散しているスギやヒノキを原因としている場合が多いですが、秋に飛ぶブタクサなどのイネ科の植物がアレルゲンとなる場合もあります。

原因を知るための血液検査

何が原因となっているかを調べるためには血液検査が必要となり、アレルゲンが判明すればアレルゲンを避けるといった予防策を取ることができるようになります。

手術療法や減感作療法(舌下免疫療法)前には治療内容および治療時期の判断のために血液検査を行います。検査をご希望の方はお申し出ください。

 

●検査費用:4千円程度(3割負担の場合)です。

●結果が出るまでに1週間程度かかります。

アレルギー性鼻炎の治療

アレルギー性鼻炎の治療において、減感作療法(舌下免疫療法)のみが根治的治療に近い治療法ですが、それ以外の治療は症状を抑える対症療法となります。

1.内服薬

抗アレルギー薬、副腎皮質ステロイド等の内服薬を単独、または組み合わせて内服して頂きます。特に抗アレルギー薬については継続内服することが重要です。また、抗アレルギー薬は効果を十分に発揮するまでに数日かかるものが多く、特に季節性アレルギー性鼻炎では症状が出現する前から内服を開始すると効果的です。 

2.点鼻薬

アドレナリン系薬剤や副腎皮質ホルモン薬などの鼻粘膜に対する噴霧薬です。内服薬にあるような眠気といった副作用はありませんが、アドレナリン系薬剤では効果持続時間が短い点、長期間使い続けると逆に鼻閉がひどくなることがある点、点鼻薬は目の痒みなどの鼻の症状以外には効果がないといった問題点もあります。

3.手術療法

●下鼻甲介粘膜焼灼術

1年中鼻炎症状がある、季節性アレルギー性鼻炎が非常にひどいといった方には、下鼻甲介粘膜焼灼術(鼻汁を最も出す部位の粘膜をレーザーで焼灼し、粘膜の縮小により鼻閉の改善、鼻汁の減少を図ります。日帰りでの局所麻酔での手術となります。)をすることで鼻炎症状を1、2年緩和することができます。

>トリクロール酢酸による下甲介粘膜焼灼術

>炭酸ガスレーザーによる下甲介粘膜焼灼術

●内視鏡下鼻腔手術Ⅰ型(下鼻甲介手術)

鼻閉が強い方には内視鏡下鼻腔手術Ⅰ型(下鼻甲介手術)(最も鼻閉の原因となっている部位の骨を粘膜下に切除して鼻閉の改善を図り、粘膜を裏側から焼灼して鼻汁の減少を図ります。全身麻酔下での手術となります。)をお勧めします。

 

後鼻神経切断術(経鼻腔的翼突管神経切除術)

上記の手術は鼻症状の改善を目的としており、くしゃみ、目の痒みには基本的に効果がなく、鼻汁も完全になくなるわけではありません。より積極的な手術として後鼻神経切断術(全身麻酔)といった手術方法もあります。

>翼突管神経と経鼻腔的翼突管神経切除術

内視鏡下鼻腔手術Ⅰ型
後鼻神経切断術

4.舌下免疫療法

アレルゲンがはっきりわかっている場合に、少量のアレルゲンを頻回に注射または舌下投与して徐々にその量を増やし、最終的には多量のアレルゲンに接触しても発作を起こさなくする方法です。

下甲介粘膜焼灼術(トリクロール酢酸による)

手術の対象

アレルギー性鼻炎で、鼻づまりの症状が強い場合

【こんな方におすすめ】

トリクロール酢酸による粘膜焼灼術は、CO2レーザーによる下甲介粘膜下焼灼術と比較すると鼻閉の改善効果は劣りますが、術後の粘膜のはれ、かさぶたの付着が非常に少なく、通院が困難な方、CO2(炭酸ガス)レーザーによる粘膜焼灼までは希望されない方、花粉症の時期だけ少しでも症状の緩和を目指したい方にお勧めの治療法です。

春にアレルギーのある方は12月頃までに手術を受けられることをお勧めします。

手術の目的

  • 主に鼻づまりを改善するために、鼻の中の空気の通り道を狭くしている下鼻甲介という部分の粘膜をトリクロール酢酸という酸を用いて焼灼します。

  • 嗅覚を感じる部分は上方にあり、下鼻甲介と離れているため、嗅覚の低下は起こりません。

  • 効果は通常は半年程度持続します。

手術法

外来で局所麻酔にて行います。全身に影響を与える薬(鎮静剤など)は用いませんので、日帰りでの手術が可能です。
まず、鼻の中に、麻酔液と血管収縮液をしみこませたガーゼを入れて15分ほど待ち、鼻の粘膜の麻酔をします。トリクロール酢酸を綿棒に塗布して下鼻甲介に数回塗布して終了です。

合併症

1.痛み

術中は鼻の粘膜には麻酔が効いていますが、鈍い痛みを感じたり、熱を感じたりする場合があります。

2.出血

通常はほとんど出血しないものですが、手術中に出血がある場合、ゼラチンスポンジやガーゼなどを鼻に詰めて止血を行う場合があります。術後になって大量出血する場合はほとんどありませんが、量が多いときには病院に来ていただき止血処置を行う可能性があります。

 

3.その他

一過性鼻閉、感染症、違和感、外鼻孔部の擦過傷等の合併症があり得ます。

術後の見通し

  • 術後1、2週間の間は、鼻の粘膜がやけどではれてしまったり、かさぶたが付着したりすることでかえって鼻づまりがひどくなることがあります。

  • 術後、粘膜のやけどが完治するまでの約2週間は、かさぶたがつきやすくなります。その間、多少の違和感を認める事があります。週1回程度の処置を行う場合があります。

  • 一度の手術で効果が不十分な方は2~4週間後に再度手術を受けられることをお勧めします。

  • アレルギー性鼻炎の方は、術後も薬物治療が必要になることがあります。

費用

手術自体は3割負担で約5,400円です。その他、処方箋代、診察代などがかかります。

下甲介粘膜焼灼術

下甲介粘膜焼灼術(CO2(炭酸ガス)レーザーによる)

手術の対象

  • 肥厚性鼻炎による鼻づまり

  • アレルギー性鼻炎で、鼻づまりの症状が強い場合

手術の目的

  • 主に鼻づまりを改善するために、鼻の中の空気の通り道を狭くしている下鼻甲介という部分の粘膜下の組織を、CO2(炭酸ガス)レーザーを用いて焼いて縮めます。また、鼻汁の分泌量を減らすこともできますが、アレルギー自体が治癒するわけではありません。

  • 嗅覚を感じる部分は上方にあり、下鼻甲介と離れているため、嗅覚の低下は起こりません。

  • 効果は通常は1、2年持続します。

手術法

通常は局所麻酔にて行います。全身に影響を与える薬(鎮静剤など)は用いませんので、日帰りでの手術が可能です。

まず、鼻の中に、麻酔液および血管収縮液を混合したものをしみこませたガーゼを20分程度入れて、鼻内の粘膜の麻酔をします。痛みや出血はわずかですが、途中で痛みを感じることがあれば必要に応じて追加麻酔をします。手術中は粘膜を焼くために焦げたにおいや煙が出ますが問題ありません。

手術は鼻内法で行うため、外から見える部位に傷や切開等はありません。片側5分程度です。

合併症

1.痛み

術中は鼻の粘膜には麻酔が効いていますが、鈍い痛みを感じたり、熱を感じたりする場合があります。

 

2.出血

通常はほとんど出血しないものですが、手術中に出血がある場合、ゼラチンスポンジやガーゼなどを鼻に詰めて止血を行う場合があります。術後になって大量出血する場合はほとんどありませんが、量が多いときには病院に来ていただき止血処置を行う可能性があります。 

3.その他

一過性の鼻づまり、感染症、違和感、レーザー器具による鼻の入り口のこすれ傷等の合併症があり得ます。

朝霞台駅前みなみ耳鼻咽喉科 炭酸ガスレーザー

炭酸ガスレーザー装置

術後の見通し

  • 手術当日はすぐに帰宅が可能です。入浴などの通常の日常生活を送ることが可能ですが、あまり強く鼻をかんだりすると出血する恐れがありますので鼻をかむ時は軽くしてください。

  • 術後1週間程度は、鼻の粘膜がやけどで腫れてしまったり、かさぶたが付着したりすることでかえって鼻づまりがひどくなることがあります。粘膜のやけどが完治するまでの2~3週間は、かさぶたがつきやすくなります。その間、多少の違和感を認める事があります。週1回程度の処置をおすすめします。

  • 基本的に手術は1回ですが、効果が不十分な場合は1ヶ月程の間隔で2回の手術をおすすめすることがあります。

  • アレルギー性鼻炎など、鼻の粘膜に刺激が加わる状況があると、1年程度で下鼻甲介がまた腫れてきます。このような場合は、再度手術が可能です。

  • アレルギー性鼻炎の方は、術後も薬物治療(内服)が必要になることがあります。

費用

手術自体は3割負担で8,730円です。その他、処方箋代、診察代などがかかります。

下甲介粘膜焼灼術(炭酸ガスレーザーによる)

翼突管神経と経鼻腔的翼突管神経切除術

アレルギー性鼻炎に対する治療は内服や外用薬などの保存的治療が基本となります。しかし、保存的治療を行っても症状の改善がみられない重症のアレルギー性鼻炎の方には、レーザー治療や経鼻腔的翼突管神経切除術などの外科的治療の適応となります。

 

鼻の中には下鼻甲介という最も容積をしめて、鼻水の分泌をする粘膜のひだがあり、知覚神経と鼻水の分泌を支配する自律神経が分布しています。この自律神経の1つが副交感神経である翼突管神経です。翼突管神経が刺激をされると下鼻甲介で鼻水が分泌され、粘膜が腫れて鼻づまりの原因となります。さらに、下鼻甲介に分布する知覚神経からの刺激により、くしゃみがおこります。下鼻甲介に分布する神経をまとめて切除する手術が後鼻神経切除術(経鼻腔的翼突管神経切除術)です。鼻の中の一部に分布する神経だけを切除するので、神経を切ること自体の副作用はほとんどないと考えられています。

治療法

下鼻甲介に分布する神経は下鼻甲介の奥にある蝶口蓋動脈という太い血管の周りに存在しています。この蝶口蓋動脈ごと切除するという術式もありますが、当院では蝶口蓋動脈に傷をつけないように温存しながら神経だけを選択的に切除しています。

経鼻翼突間神経切断術の適応となる方は重症のアレルギー性鼻炎の方が多く、鼻づまりがひどいことが多いです。このため、内視鏡下鼻腔手術Ⅰ型(下鼻甲介手術)を併せて行うことが多いです。さらに、鼻中隔弯曲症がある場合には安全に蝶口蓋動脈を露出させることが困難となるため、鼻中隔矯正術を行う場合があります。

手術の目的

下鼻甲介に分布している知覚神経と副交感神経を切除することで、くしゃみ、鼻水、鼻づまりの症状を緩和することを目的としています。アレルギー自体が治るわけではありません。

手術法

全身麻酔下に鼻内内視鏡下手術を行います。モニターを見ながら鼻内より内視鏡下に手術を行います。従来の手術のように顔面の切開は不要で、身体への負担や合併症が少なく、回復も早くなります。

具体的には、下鼻甲介に分布する翼突管神経を含めた神経が走行している蝶口蓋動脈を露出させて神経を選択的に切除していきます。

手術は片側10~15分程度で終了します。

 

●術式

経鼻腔的翼突管神経切除術

※病状により、以下の手術内容を追加する場合があります。

鼻中隔矯正術

内視鏡下鼻腔手術Ⅰ型(下鼻甲介手術)

入院期間

1泊入院

合併症

当院の執刀医(南)はこれまで約300例の経鼻腔的翼突管神経切除術で重篤な合併症の発生例はありません。

1.痛み

術後に多少は痛みがあります。鼻内に止血剤(吸収性の綿)を留置していることによる鼻閉のために頭痛を伴うこともあります。鎮痛剤が必要となる程の痛みが出ることは少ないですが、鎮痛剤で痛みのコントロールできることがほとんどです。

 

2.鼻出血、術後出血

術後には吸収性の綿を挿入し止血します。手術翌日までは少量の出血があることがありますが、徐々に改善します。術翌日または3日目に吸収性の綿を取り除きますが、出血が続く場合は再度処置を行います。蝶口蓋動脈動脈は温存していますが、0.5%の症例で術後に蝶口蓋動脈からの出血を認めたという報告もあります。

 

3.眼症状

蝶口蓋動脈が存在している部分は眼球が存在している場所(眼窩)の近くです。眼窩の内側に損傷が加わると、眼球を動かす筋肉や眼球そのものに影響が及ぶ重症合併症の可能性が極めてまれにあります。具体的には視力障害、視野障害、複視(物が二重にみえる)、眼球運動障害、眼球偏位が起こる事があります。損傷がなくても操作部からの出血が眼窩内にまわり、術後に内出血(パンダ目)になる事があります。内出血が起こったとしても通常は眼窩の内側の下(クマができる部分)の極わずかな皮下出血程度で、1週間程で消失します。

 

4.鼻の違和感・鼻閉感

手術をしたことでしばらくの間、鼻の違和感がありますが、徐々に改善します。創部が落ち着くまでの数週間はカサブタがつくために鼻閉感を伴うこともあります。下鼻甲介を支配する知覚神経を切断することで鼻の奥の方の感覚が鈍くなります。極めてまれに口の上(口蓋)の違和感を訴える方がいらっしゃいます。

 

5.術後の一時的な嗅覚障害

嗅覚を感じる部位(嗅裂部)への手術操作は行いませんが、術後に止血のための止血剤を留置すること等により一時的に嗅覚障害を生じることがまれにあります。通常は数週間で元の状態に戻ります。

 

6.Toxic shock Syndrome(10万人に16人程度)

鼻腔内の感染部位を手術するため、主に黄色ブドウ球菌の産生する毒素の1つ(Toxic Shock Syndrome Toxin-1: TSST-1)によって急激な発熱や多臓器の障害を引き起こす疾患です。適切な抗菌剤の投与、不要な術後鼻内ガーゼ留置を控えることでTSSの発症を大幅に予防することができます。

 

7.鼻中隔矯正術に伴う合併症

( a ) 鼻中隔穿孔

術中操作、術後の血流障害のために鼻中隔粘膜に孔があいた状態となる場合がまれにあります。機能的には問題はありませんが、状況に応じて閉鎖処置を行います。

 

( b ) 鞍鼻(あんび)

弯曲した鼻中隔を構成する骨を過剰に切除すると鼻背部(鼻すじ)が陥凹して鞍鼻になる危険性があります。このため、上方まで鼻中隔弯曲を認めている場合には、無理に骨を切除せずに、骨にスリットを複数入れて修正します。

 

8.内視鏡下鼻腔手術Ⅰ型(下鼻甲介手術)に伴う合併症

鼻涙管閉塞症

涙袋と鼻腔を交通している通路を鼻涙管と呼びます。下鼻甲介に対する手術を併せて行った場合、手術の操作や術後変化によりまれに鼻涙管が閉塞することがあり、そのために涙の流れが停滞して眼脂(めやに)や流涙が継続します。改善のため手術的治療を考慮する場合もあります。

翼突管神経と経鼻腔翼突管神経切断術
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